卸先や法人取引先によって「銀行振込のみ」「請求書払い」「クレジットカード不可」など支払い条件を変えたい場合、Shopifyの標準機能でどこまで対応できるかを整理します。手動・Flow・アプリを含む現実的な解決策も紹介。
この記事が当てはまるケース
取引先によって支払い方法を分けたい、という場面は意外と多いです。たとえばこんなケースに心当たりがある方に向けた記事です。
- 法人の卸先には銀行振込・後払いのみ許可したい
- 一般消費者はクレジットカード払いOKだが、特定の法人にはカード決済を表示させたくない
- 新規取引先は前払い、既存の信頼できる取引先には月締め請求書払いを使わせたい
- ドロップシッピングの仕入先ごとに異なる決済条件がある
Shopifyの標準的なEC向け設定では、支払い方法は全顧客に同じ選択肢が表示されるため、こういった条件分けは一筋縄ではいきません。
結論
Shopify標準機能だけで取引先ごとに支払い方法を完全に切り替えることは、現時点では難しいです。ただし、顧客タグ・Shopify Flow・B2Bアプリ・Payment Customization(スクリプトまたは関数)を組み合わせることで、実用的な運用は十分に組み立てられます。
どの方法を選ぶかは、取引先の数・支払い条件のパターン数・月次の手間をどこまで許容できるかによって変わります。以下で順番に整理します。
Shopify標準機能でできること
まず押さえておきたい標準の仕組みは3つです。
- 支払い方法の追加・削除:管理画面の「設定 → 決済」から利用する決済手段を管理できます。ただし有効にした方法は原則として全顧客に表示されます。
- 手動決済方法の登録:「銀行振込」「代金引換」などを手動決済方法として登録しておくと、顧客がチェックアウト時に選択できます。ただしこれも全顧客に表示されます。
- Payment Customization(Functions):Shopify FunctionsというAPIを使うと、チェックアウト時に特定条件で支払い方法を非表示・並び替えできます。ただし実装にはアプリか開発リソースが必要です。
標準の管理画面の操作だけで「この取引先にはこの支払い方法だけ見せる」を設定するUIは、現時点では存在しません。
標準機能だけでは難しいこと
具体的に詰まるポイントを整理します。
- 顧客単位・タグ単位での支払い方法の出し分け:管理画面だけでは不可能です。全顧客に同じ選択肢が表示されます。
- 「この会社にはカード払いを非表示」という制御:チェックアウトのUIはカスタマイズに制限があり、スクリプト(Shopify Script)はPlus専用でした。通常プランではFunctionsアプリを使う必要があります。
- 月締め請求・社内承認後の入金フロー:Shopifyのチェックアウトは原則「購入時に決済確定」の設計なので、「注文を受けて後から請求書を送る」という後払い運用とは根本的に相性が悪いです。
- 取引先ごとの与信・支払い条件の記録:Shopifyの顧客情報にはそういった業務情報を管理する標準フィールドがありません。メモやタグで代替することになります。
手動・Shopify Flow・外部サービス・既存アプリなどの解決策
現実的に使える方法を4パターン紹介します。
① 顧客タグ+Payment Customization アプリ
特定の顧客タグが付いている場合に、チェックアウトで特定の支払い方法を非表示にする、という制御が可能です。たとえば「wholesale」タグが付いた顧客にはカード払いを非表示にして銀行振込のみ表示する、といった設定ができます。
Shopify App Storeには「Payment Customization」や「Checkout Rules」系のアプリがいくつかあり、Functionsの実装をノーコードで提供しているものもあります。通常プランでも利用できるアプリを選ぶことが前提です。
手順の概要は以下のとおりです。
- 法人取引先の顧客に専用タグ(例:
b2b-transfer)を付与する - Payment Customizationアプリをインストールし、「タグが
b2b-transferの場合、クレジットカード払いを非表示」というルールを設定する - 銀行振込などの手動決済方法を有効にしておく
取引先が増えるたびにタグを付けるだけで対応できるので、運用はシンプルです。
② Shopify Flowで注文後に支払い方法を通知・管理する
チェックアウト時の表示制御ではなく「注文が入ったあとの業務フロー」を自動化する方法です。たとえば「法人タグが付いている顧客からの注文が入ったら、担当者にメール通知して請求書を手動で送る」という流れをFlowで組むことができます。
支払い方法の表示そのものは変わりませんが、後払い運用の手作業を半自動化できます。「どうせ請求書払いで処理するので、チェックアウト時の支払いはとりあえず通過させる」という割り切りができる場合に有効です。
③ B2B・卸売専用アプリ(Wholesale系)
Wholesale Club、Handshake代替系のアプリは、法人向けに別のストアフロントや会員ページを提供し、そこでは決済方法を一般向けと分けて設定できるものがあります。価格・支払い・在庫を法人向けに切り出せるため、取引先の数が多い場合には管理しやすいです。
ただし導入・設定コストがやや高く、英語UIのアプリが多いため日本語でのサポートは期待しにくい点は注意が必要です。
④ 注文フォームを外出しにして決済をShopify外で完結させる
Google Forms・kintone・TypeformなどでB2B向けの注文フォームを作り、支払いはShopifyのチェックアウトを通さずに請求書・振込で処理するという方法です。Shopifyには在庫管理と発送だけ使う、という割り切りです。
シンプルな取引先が数社程度の場合、これが一番手っ取り早いケースもあります。ただし在庫の二重管理や注文のShopify登録を手動で行う手間が生じます。
各方法の違いと選び方
取引先の数・支払いパターンの複雑さ・手間の許容量で選ぶのがシンプルだと思います。
- 取引先が少なく(〜10社程度)、パターンも2〜3種類:顧客タグ+Payment Customizationアプリが最もコスパがよいです。設定も比較的シンプルです。
- 後払い運用を自動化したい・通知だけでよい:Shopify Flowで注文トリガーの通知や担当割り振りを組むのが現実的です。
- 取引先が多く価格も分けたい:Wholesale系アプリが向いています。ただし運用コストは上がります。
- B2Bの注文が月数件で管理も属人的:フォーム外出し+手動Shopify登録が一番早いこともあります。
なお、eing が提供するアプリは注文情報を社内チャット(LINE WORKSやChatwork)に通知する用途に向いています。支払い方法の出し分けそのものではなく、「法人注文が入ったら担当者に通知して後処理に繋げる」という流れを組みたい場合の選択肢として検討できます。
設定・運用上の注意点
実際に動かすときに引っかかりやすい点をまとめます。
- Payment Customizationアプリは通常プラン対応か確認する:Shopify FunctionsはPlus不要ですが、アプリ側がPlus前提の料金設定になっているケースがあります。インストール前にプラン要件を確認してください。
- 顧客タグの管理ルールを決めておく:タグは誰でも自由に付与・変更できるため、誤ったタグが付くと支払い方法の制御が意図せず変わります。タグ名の命名規則と付与ルールをチーム内で共有しておくことを強くすすめます。
- 手動決済方法の金額確認フローを決める:銀行振込を手動決済として設定した場合、Shopify側では入金確認ができません。入金確認→注文承認のフローを別途運用で決めておく必要があります。
- テスト注文で動作を必ず確認する:Payment Customizationの設定はテスト顧客アカウントを作ってチェックアウトを実際に通過させて確認するのが確実です。管理画面だけでは想定どおり動いているか分かりにくいです。
- Shopify Functionsはアプリ経由が現実的:自前でFunctionsを実装する場合は開発環境とShopify CLIが必要です。開発リソースがない場合はアプリ経由を選んだほうが早いです。
まとめ
取引先ごとに支払い方法を変えたいというニーズは、B2B運用では普通に発生しますが、Shopifyの標準機能だけで完結させることは現時点では難しいです。
現実的な対応としては、顧客タグ+Payment Customizationアプリによるチェックアウト制御が最もバランスがよく、通常プランでも運用できます。後払い・請求書払いのフロー自体はShopify Flowや手動運用で補完するという組み合わせになることが多いです。
取引先の数やパターンが増えてくれば、Wholesale系アプリへの移行も選択肢に入ります。まずは今の取引先数と支払いパターンの整理から始めるのがよいと思います。
